2007/02/08

役を信じ、強さ生む 松たか子がジャンヌ・ダルク【朝日新聞 2/8】

2007年02月08日

 松たか子が主演するフランス演劇の名作「ひばり」(ジャン・アヌイ作、岩切正一郎翻訳)が、東京・渋谷のシアターコクーンで開幕した。演出は蜷川幸雄。15世紀の英仏の百年戦争末期にフランスのために戦ったが、魔女とされて火刑に処せられた少女ジャンヌ・ダルクの生涯をつづる。


松たか子=東京都内で
 「ひばり」(1953年作品)はジャンヌを裁く法廷が舞台。天使らの「声」を聞いた農家の娘が軍隊を率いて英国軍を退け、王太子を戴冠(たいかん)させるが、その後捕らえられ、異端の疑いをかけられる波乱の歩みが、裁判の中で再現される。

 松は「台本を読んだ時は想像しきれない部分がたくさんありましたが、実際に動くと見えてくるものが多く、充実したけいこができました」と語る。「劇の構成は複雑ですが、頭ばかり大きくならずに、ジャンヌの少女らしい無邪気さ、無謀さ、大胆さなどを大事に表現したいと思います」

 出演者全員が舞台を囲んで座り、出番のない時も終始展開を見つめるという演出だ。「ボクシングのリングのよう。共演者の目線が強いので、立っていて怖いです。それに負けないようにしないと、ぺしゃんこにされてしまう」

 蜷川とは、95、98年に「ハムレット」でオフィーリアを演じて以来、9年ぶりの顔合わせ。

 「もう一度やろうと声をかけてもらえて、うれしいです。蜷川さんは細かい所のリアルさと同時に表現の大胆さ、強さを求める。せりふをきれいに語るだけじゃだめ、もっともっと生々しさをと言われています」

 松は、串田和美演出のブレヒト劇などでも、困難な状況を生き抜くヒロインを演じ、印象的だった。ジャンヌも過酷な運命を引き受ける凜(りん)とした少女。その強い表現はどこから生まれるのだろう。

 松は少し考えながら「私はもらった役を絶対に捨てない。どこまでも役を信じる単純さを持っているのかなと思います」と言う。

 「せりふが言いにくい、演じていて違和感があるといったことは大切に考えながらけいこしますが、役の言っていることは単純に信じます。演じる者が信じなければ、見ている人を説得できませんよね。だから、今回もジャンヌがそうだったように、自信と誇りを持って、丁寧に人に対してゆきたいと思います」

 益岡徹、橋本さとし、山崎一、壤晴彦、小島聖、磯部勉、品川徹らが出演。28日まで。電話03・3477・3244(劇場)。

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